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森智勝先生の「地域1番塾への道」vol.70

森 智勝(もり ともかつ) <プロフィール>

全国学習塾援護会 主宰、塾生獲得実践会 代表

・26歳で学習塾設立、7教室を経営する。

・平成14年 塾専門のマーケティング勉強会「塾生獲得実践会」設立

・平成18年 「全国学習塾援護会」設立

・現在、全国各地で塾経営者を対象としたセミナーの講演、スタッフ研修に奔走。

全国私塾情報センター主催の「春季大都市縦断セミナー」「地方塾セミナー」に講師として参加。

机上の空論ではない具体的な内容と、参加者にプラスのエネルギーを生じさせる講演には定評がある。今、最も支持されている塾経営アドバイザーの一人。

 

「地域1番塾への道」2020.10月号-説得力(コピーライティング)№1の塾を目指して⑭

この項は前号の続きです。未読の方は前号からご覧ください。

 

前号で紹介した案内文は、演出の中でも比較的軽度のものです。

 

私はこの時期になると決まって憂鬱な気分になります。春に送り出した卒塾生…志望する高校に見事合格し、新しい世界で希望に溢れて生活しているはずの学生や保護者が悲痛な顔で相談に来るのです。「先生、まったく授業についていけません。前回のテストは赤点でした…」

 

この冒頭部分は演出です。毎年、同じような事例があるとは限りません。しかし、読者にとっては「確かにあるだろうな」と思うでしょうし、塾に相談に行かなくても、そうした悩みを抱えている高校生は確実に存在します。そして、その原因が文中で説明しているように、高校入学直後の過ごし方にあることは、プロである「あなた」には同意してもらえることだと思います。

 

この演出をもう一歩進めて「物語」にすると、より効果的です。同じ内容を物語にして作成したバージョンを以下に紹介します。高校進学後に成績不振で悩む生徒の象徴としてA君に登場してもらいます。


 

中3生の保護者各位

 

緊急のお知らせ

 

数年前のちょうど今頃のことです。一人の卒塾生(A君、高校2年生)が私のところに訪ねてきました。久しぶりの再開を喜びましたが、彼は浮かない顔をしています。聞けば、高校を退学したと言うのです。A君は劣等生ではありません。それどころか中学生時代は優秀な成績を誇り、県内でもトップクラスの高校に進学した生徒でした。それが学業不振から不登校になり、退学に至ったのです。

 

それまでも、よく似た事例はありました。志望する高校に見事合格し、新しい世界で希望に溢れて生活しているはずの学生や保護者が悲痛な顔で相談に来るのです。

 

「先生、まったく授業についていけません。前回のテストは赤点でした…」

 

それは、優秀な成績で上位校に合格した生徒に多い傾向です。例えば、偏差値60の高校には基準値プラスマイナス3程度の生徒が集まっています。入学時の学力に大きな差はありません。ところが卒業時には、その中から偏差値70を超えて国公立大学に進学する生徒と、30台に落ち込み専門学校すら危ぶまれる生徒が現れます。その差はどこにあるのでしょう。原因は明らかです。

 

高校入学当初の過ごし方です。高校で学ぶ学問のレベルは中学までとは比べものにならないくらい高度で、そして高速で展開されます。志望校合格に浮かれ、それまでと同じ感覚で授業に臨んでいると、どんな優秀な生徒でも理解不能に陥ります。また、最初のテストで悪い成績を取っても、中学生まで成績優秀だった生徒ほど楽観視してしまいます。当然です。彼らは「悪い成績を取った経験」をほとんどしていないのですから。

 

「ちょっとサボっちゃったな。でも、少し頑張ればすぐに追いつけるさ!」

 

多くの生徒が油断しています。これは、生徒本人に限ったことではなく、保護者も同様の油断をしています。また、我が子が高校生になってまで親がとやかく言うことに躊躇する心理も大いに理解できます。

 

ところが、その時は手遅れです。追いつく前に相手(学習レベル)は遥か遠くへと去ってしまいます。 合格に浮かれることなく地道な努力を始める者との間には、埋めることのできない差が生じるのです。

 

そうした危険性も全て、高校入学後の3ヶ月に潜んでいます。私は、学習指導のプロです。プロの目には、志望校合格の歓喜の足元に、大きく口を開けて待っている落とし穴がハッキリと見えています。

 

生徒達を高校に送り出すとき、私は口をすっぱくして以上のことを伝え、戒めるのですが、毎年のように悲痛な顔で相談に来る生徒が出現します。正直、「あれほど言ったのに…自業自得だ」と思っていました。しかし…

 

私は目の前にある危険を告げることだけで、教育者としての責任回避していたのではないか!

 

退学という最悪の結果を招いたA君の姿を見て突然、そんな思いが頭を過(よ)ぎったのです。もしかしたら私自身も自塾の合格実績に浮かれ、自らの使命を放棄していたのではないか。面倒見の良い塾を標榜しながら、大きな落とし穴に落ちようとする子供たちに手を差し伸べていなかったのではないか…そうした自責の念にかられるようになりました。対応策はありました。しかし、それを実行するには大きな勇気と決断が必要でした。たとえ必要なことでも、塾がそこまで介入してよいものかどうか。困惑する生徒と保護者の顔が浮かびました。数ヶ月、あんなに悩んだことはありません。そして、決断しました。

 

中学3年生のカリキュラムを高1の5月(高校最初の定期考査)まで延長しよう…と。


生徒達には嫌がられました。また、ご家庭にもご負担を掛けることになります。しかし、子供たちの将来に責任ある立場として、これ以上、堕ちて行く子供たちを見過ごすことはできませんでした。

 

現中3クラス生も、来年5月までの学習指導を当塾にお任せいただき、順調な離陸を成し遂げた後に卒塾してほしい。高校生活に慣れ、自立して学習ができるようになるまで当塾に責任を取らせてほしい。大学受験に向けたカリキュラムを生徒本人と一緒になって構築し、明るい展望を持って塾を去ってほしい…この2ヶ月のカリキュラム延長を絶対に後悔はさせません。わずか2ヶ月ですが、生徒にとっては人生を変える2ヶ月です。

 

趣旨を充分にご理解の上、カリキュラムの延長をご了承下さい。

 

ちなみにA君は当塾で勉強を再開し、高卒認定試験(旧大検)に合格。今では少し遅れはしましたが、大学のキャンパスで活き活きと学んでいます。

 

○○塾 塾長 ○○ ○○

 


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