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森智勝先生の「地域1番塾への道」vol.49

森 智勝(もり ともかつ) <プロフィール>

全国学習塾援護会 主宰、塾生獲得実践会 代表

・26歳で学習塾設立、7教室を経営する。

・平成14年 塾専門のマーケティング勉強会「塾生獲得実践会」設立

・平成18年 「全国学習塾援護会」設立

・現在、全国各地で塾経営者を対象としたセミナーの講演、スタッフ研修に奔走。

全国私塾情報センター主催の「春季大都市縦断セミナー」「地方塾セミナー」に講師として参加。

机上の空論ではない具体的な内容と、参加者にプラスのエネルギーを生じさせる講演には定評がある。今、最も支持されている塾経営アドバイザーの一人。

2017.3月号‐「成績を上げる地域№1になるために」9-

前号まで「成績が上がる個別指導」について論じました。今回は自立学習指導
編です。個別指導にも共通する概念が多いと思いますので、ぜひ、参考にしてく
ださい。

 

自立学習を成功させるベースは、「生徒の学習意欲をいかに引き出すか」にあ
ります。自学自習が基本ですので、生徒ひとり1人が集中して前向きに学習する
雰囲気作りが重要です。教室の隅の机で、うつらうつらと居眠りしていたり、こっ
そりノートに落書きしているようではダメです。

 

最初が肝心です。

 

教室全体が勉強する雰囲気で充満していれば、後から入塾してきた生徒は、そ
の雰囲気に迎合するようになります。先輩たちの気迫を感じて、自らを律するよ
うになります。その文化(伝統)が作られたならば、後は楽なのですが、そこに
至るまでは塾長(教室責任者)のリーダーシップが必要です。

 

そうした雰囲気作りができているという前提で、以下に学習法を論じます。

 

自立学習指導ですから当然、生徒の自立性に依拠した学習法になります。とこ
ろがそこに、大きな落とし穴が待っています。多くの自立学習指導塾が、その線
引き(どこまで自主性に任せるか)があいまいなのです。有体に言えば、塾の都
合で自立と指導を使い分けています。

 

私は、中途半端は辞めて、どちらか一方に徹底すべきだと考えています。

 

もし「自立」を徹底するならば、本気で自立させるべきです。某中堅塾(生徒
数3,500人)はクラス指導にも関わらず、宿題も自己申告で決めています。この
塾の名物?に夏合宿があるのですが、驚くことに、塾が決めるのは大枠(日程・
食事時間・就寝時間等)だけで、2泊3日の中身…どれだけ勉強するか、どこで
息抜き(レクレーション)するか等々は、事前に作った班ごとに生徒が相談して決
めています。そんなことをすれば、遊びばかりの合宿になりはしないかと心配す
る向きもありますが、塾長曰く「生徒に決めさせると、我々塾人が決める以上に
勉強時間が多くなるのですよ。そして、自分たちで決めたことだから、必ず守り
ます」。

 

塾は、生徒の要請に従って、個々の学習教材を準備するだけです。ここまで自
立に徹底すると、実に清々しい。この合宿は伝統になっていて、参加希望者が殺
到しています。多分、初期の頃は塾側がアドバイスしていたと思いますが、今で
はほとんど口を出さないそうです。「その方が上手くいく」らしい。ここまで徹
底すれば、1つの差別化になると思います。

 

自立、と言いながら、学習内容は指示する、宿題も強制する…それでいて管理
は「自立だから」と言って緩くなる…これでは意味がありません。

 

私が現役の塾経営者だった時、個別指導部門が満杯で溢れたので、親しい?ご
家庭の子弟20名を選抜し、自立学習コースを作ったことがあります。名付けてシー
ダクラブ。(シーダというのは「杉」という意味です)

 

謳い文句は「塾長の森が責任を持って指導します」。実際には私は何もしませ
ん。生徒たちに宣言したのは、

  1. 私からは教えない、指示も出さない。
  2. 欲しい教材は全て提供する。
  3. 好きなだけ勉強しなさい。

 

これだけです。私は週に3日、事務作業をしながら見ている(監督している)
だけです。たまに、「〇〇のプリントちょうだい」と言われれば、その教材を準
備して手渡す程度。まあ、授業の最初と最後に檄を飛ばしてはいましたが…。本
当に何もしませんでした。

 

ところが20名の成績は、本人も保護者も私も驚くくらい伸びました。某母親か
らは「先生は本当に何も教えてくれないんですね」と三者面談で言われ、娘(生
徒)から「余計なこと、言わんでいいから」とフォローされる始末です。その生
徒(中3)は確か、1学期の間に学年順位を100番程度UPさせていたと記憶し
ています。

 

某男子生徒(2年生:万年学年2位)には、「一度でいいからトップを獲れ。
塾に通ってもいない女子生徒に1番を独占させておくのは、塾長として腹立たし
い」とハッパを掛け続けました。1学期の期末テストで彼は学年1位になり、そ
の後、最後までトップを守り抜きました。

 

結局、2年後に私が塾経営から手を引きましたので、自立学習を極めるまでは
いきませんでしたが、私自身、自立学習に大きな可能性を感じたものです。

 

ちなみに授業料は週2回or3回で29,000円(税別)でした。上記の某母親は、
それだけ払っているのに何も教えてもらっていないのが不満だったようです。で
も、成績は滅茶苦茶伸びているので大声で文句も言えないし…そんな様子でした
ね。

 

つまり、トコトン自立を極めれば、学習効果は高いし、そのことで評判を作る
ことも可能だと思うのです。ただ、それには塾長の覚悟が必要です。もし、その
覚悟がないのでしたら、自立という名の管理学習に徹した方がいい。トレーナー
の役割を徹底することです。見本は…ライザップです。

 

言うまでもなくトレーナーはトレイン(列車)から作られた言葉です。決まっ
た目的地へ決まった時間に運ぶのがトレインです。(ちなみにコーチ[馬車]は、
乗客の望むところへ連れていく者です)

 

ライザップが様々な問題を抱えていることは知っています。それでも「結果に
コミットする」という謳い文句と、明らかな使用前・使用後のコマーシャルによっ
て飛躍的な業績向上を実現しています。

 

私は、自立学習こそ徹底した管理学習を敷いて、「結果にコミットすること」
が必要だと考えていますし、その方が「生徒の自立に徹底的に任せて結果を出す」
よりも簡単だと考えています。

 

もともと、授業中は自学自習ですから、勝負はその前に決しています。その生
徒に本当に必要な「学習内容」「学習量」「教材」を提示し、徹底管理の元、や
り切らせる。そして結果(成績向上)を出す。それしかないと考えています。多
くの自立学習塾が、(言葉は乱暴になりますが)その点が本当にいい加減です。

 

塾 「今日、何やる~?」
生徒「う~ん、英語のワークやる」
塾 「じゃあ、学習報告書に書いてから始めてね~」

 

こんないい加減なことをやっていて、「それが自立学習だ」と言い張るのは間
違っています。いえ、ビジネスですから、それで生徒がワンサカと集まって、ウ
ハウハと儲かっているなら問題はありません。ただ、そんな都合の良い想定が私
には出来ないのです。

 

生徒ひとり1人に対して、学習計画表を作り、行動目標を提示し、ある種の強
制力を持って勉強させ、早く結果を出させる。そのこと(小さな成功体験)をもっ
て学習意欲を向上させ、真の自立学習へと向かわせる…それが必要だと考えてい
ます。

 

せめて、向こう3ヶ月の学習計画表と目標。週間学習計画表。1日の学習計画
を策定し、それに沿った教材の作成・提供、家庭学習の進捗状況の管理を塾が責
任を持って実行することです。当然、挫折する生徒も出てくることでしょう。し
かし、それを恐れて温(ぬる)い指導しかできないでいると結局、「自習させるだ
けで高い授業料を取る、通うに値しない塾だ」という評判を作るだけです。逆説
的ですが、自立学習を標榜している塾こそ、管理学習が必要なのです。(繰り返
しますが、本当の自立学習の道を進むのは大きな覚悟が必要です。よっぽどの方
でないと、お勧めできません)

 

個別指導塾は当然のごとく、この管理学習が必要です。それで高い授業料を設
定しているのですから。

 

これは指導形態に関わらず、ですが、「結果にコミットする」というのは塾と
いうビジネスを考えた場合、外せない概念です。ただ顧客(生徒・保護者)によっ
て、「結果」の中身が微妙に違うだけです。ほとんどの顧客は、成績向上・志望
校合格という結果を求めています。少なくとも、「人間性の向上」などという抽
象的な「結果」に納得する顧客は少ない(皆無)と覚悟してください。

塾生獲得実践会(全国学習塾援護会)
森 智勝

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